2011 年 9 月 13 日

武久源造さんが10/8+9のコンサートで弾くバルダキン・オルガンとは?

10月8日(土)・9日(日)に、開催するコンサート『武久源造 バルダキン・オルガンを弾く』について、
よく「‘バルダキン・オルガン’ってなに?」とお問い合わせをいただきます。

そこで、
CD『鍵盤音楽の領域vol.9 バルダキン・オルガンの世界』(コジマ録音 ALCD-1121)を録音した際の写真も交えて、バルダキン・オルガンをできるだけ具体的にご紹介したいと思います。

 

まず、
バルダキンとは  Baldachin ‘天蓋’の意味です。

見た目からご説明申し上げると・・・
バルダキン(天蓋)のついたパイプケース(赤と金色の装飾的な部分)に鍵盤がついたオルガン本体と、その反対側に送風装置(1対のくさび形をした手フイゴ、下の写真ではハリセンのように見える部分)を、テーブルの上に置いた、ポジティフ(可動式の小型のパイプ・オルガン)のことです。

このたび使用するオルガンは2台。中西光彦さんが製作しました。

オルガンⅠ(左) オルガンⅡ (右) *背後に見えるのが草苅オルガンです

オルガンⅠ(左) オルガンⅡ (右) *背後に見えるのは草苅工房製のオルガンです

オルガンⅠ(北イタリア南チロル クールブルク城所蔵) シュトローベル製作1559年モデル(2005年)
オルガンⅡ(スイス山間の町クール レイティッシュ博物館所蔵) 製作者不詳16世紀モデル(2007年)

現存する当時の楽器の修復記録をもとに復元しました。
「16世紀、南蛮船がこれと同じような型のパイプオルガンを日本にもたらし、それが奏でる多彩な音色に織田信長も魅了された」との伝もあるそうです。

中西さんはアマチュアを自称されていますが、2台のオルガンの出来映えについて各方面からオルガン・ビルダーとして評価されています。

 



製作者・中西光彦さんによる楽器解説・・・

今回のコンサートに用いられる2台のルネサンス様式バルダキン・オルガンは、それぞれ現存する歴史的オルガンをモデルとして制作したものである。その内の1台は北イタリア南チロルのクールブルク城に残されているもの、他の1台はスイス山間の町クールのレイティッシュ博物館が所蔵している‘イェナッツのポジティフ’と呼ばれるものをそれぞれ原型としている。
ルネサンス様式バルダキン・オルガンとは、外観的にはテーブルの上にバルダキン Baldachin(天蓋)を冠せた装飾豊かなケースが特徴のオルガン本体と、その後ろに送風装置としての1対の楔形手フイゴを置いたポジティフを指す。
今回の2台のオルガンは、上記原型のパイプ・風箱・アクション等の本体内部については、20世紀になって行われた修復の際の各部採寸記録と筆者の力量及び 理解度に基づき、出来る限り忠実にその機能を再現したものである。ただし、本体に施された装飾は筆者独自のデザインとして制作した。

美しい天蓋を冠した  オルガンⅡ と中西光彦さん

美しい天蓋を冠した オルガンⅡ と中西光彦さん


中西光彦さんのプロフィール

奈良市内の高校に国語科教諭として勤務する傍ら、中世ルネサンス音楽の演奏団体の一員として活動。その関連でオルガンに関心を持つようになり、独学で知見を養う一方退職と同時に山梨県小淵沢に1年余滞在し、草苅オルガン工房にて草苅徹夫氏の指導を受けてオルガン制作を研修した。奈良県山添村に工房を構え、歴史的な小型オルガンのコピー等、主としてポジティフオルガンの制作に取り組んでいる。パイプ・鍵盤・ケース・装飾・その他必要な部品等全てを自作するのを身上としている。日本オルガン研究会会員。

 


 演奏するときは・・・

バルダキン・オルガンの演奏の様子 左から辻康介さん、武久源造さん、山口真理子さん、立岩潤三さん

バルダキン・オルガンの演奏の様子 左から辻康介さん、武久源造さん、山口真理子さん、立岩潤三さん

 

パイプが納められた箱を挟んで、オルガニストとふいご担当者がむかいあい、息を合わせて二人一組で演奏します。

ふいご手は、通常は畳まれた状態にある蛇腹を、持ちあげて脹らませます。手を離すと蛇腹は、萎んでいきます。
この動作を左右交互に繰り返してパイプに風を送るのです。

 

録音の際は、ふいご手も担当されたオルガンビルダーの草苅徹夫さん

録音の際は、ふいご手も担当されたオルガンビルダーの草苅徹夫さん

 

ふいごの操作は簡単そうに見えて、とても大変。絶えず左右の蛇腹を交互に持ち上げるのはけっこう重労働ですし、楽曲をよく理解し演奏者の求める響きを支えます。

演奏者とふいご手が息を合わせて音を紡いでいく様子は何とも言えぬ清らかさが漂います。
また、ふいご操作の際に生じるいくらかの軋みといったものも、このように古い時代の楽器ならではの味わいと申せましょう。
武久さんはこのオルガンの音の良さについて
「いわゆる透明な美しさではない。いわば、自然の湧き水、ミネラルやら「自然の気」やらが程よく混入した美味しい水、まさに、身体を元気にするような音なのだ」と表現しています。

 

箱の中。パイプがぎっしり納められています。

箱の中。パイプがぎっしり納められています。

 

オルガンⅠ の鍵盤

オルガンⅠ の鍵盤

 

バルダキン・オルガンについては、下記の記事もご参照ください。
16世紀型の手動式フイゴのパイプオルガンによるレコーディング
16世紀型の手動式フイゴのパイプオルガンによるレコーディング.おまけ

また、中西光彦さんの工房がある奈良県の芸術文芸サロン・佐保山茶論のサイトに、[オルガン Ⅰ ]を用いての演奏会の模様と、中西さんの工房の様子が紹介されています。武久さんによる中西オルガンへの絶賛コメントも。
武久源造 16世紀ルネサンス パイプオルガン演奏会

 

武久源造さん「このオルガンを、ふいご手と息を合わせて弾いていると、私は時を忘れてしまう・・・」

武久源造さん曰く「このオルガンを、ふいご手と息を合わせて弾いていると、私は時を忘れてしまう・・・」

 

[オルガンⅠ ]と[オルガンⅡ]は、このたびのコンサートのためにそれぞれフィリア美術館に運ばれてきます。そして組立るのですが、2台を同じピッチに合わせるなど調整に3日間を要します。
このように手間のかかるコンサートは、今後なかなか企画し得ないでしょう。
当日は、演奏者と製作者による楽器の解説もあります。
至近距離で奏でられる、いにしえのオルガンの音色 ♪
ぜひこの貴重な機会をお見逃しなく!

 

2011年10月8日(土)・9日(日)
CD『バルダキン・オルガンの世界』発売記念コンサート
『武久源造 バルダキン・オルガンを弾く』
開催します!

"" 前売券 3,500円 / 2日通し券 6,500円 / ペア券(お二人で) 6,500円
"" 当日券 3,800円
全席自由席(休憩時に茶菓あり)

前売券は、フィリア美術館で直接ご購入いただくか、メール・FAX・インターネットでご予約くださるようお願いいたします。

◇メール送り先 → organ2011@philia-museum.jp

◇電話・FAX → 0551-36-4221

◇インターネット → パソコン用予約フォーム

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